亘理町の避難所を紹介した地元新聞「河北新報」の記事

亘理小学校避難所 

亘理小(宮城)/発生時刻に毎日黙とう
犠牲者の冥福を祈って黙とうする住民=20日午後2時46分、宮城県亘理町の亘理小体育館

<住所>宮城県亘理町下小路22の2
<避難者数>294人(20日午後2時現在)
<避難地区>亘理町荒浜、逢隈高屋
 
 宮城県亘理町役場に近い町中心部にあり、荒浜、逢隈高屋地区の住民が身を寄せる。9、10の両日行われた再編
で、同じ行政区の住民がまとまるように集約された。 毎日、地震発生時刻の午後2時46分になると、犠牲者の冥福を
祈り、避難住民が1分間の黙とうをささげる。発生から1週間、1カ月などの節目に限らず、日課として行われている。 
 町職員の鈴木邦彦さん(53)が「1日1回、短い時間だけでも犠牲者のことを思ってもいいのではないか」と呼び掛け、
3月中旬に開始。毎日欠かさず続けている。
 「一日中じっと座っている人もいる。立ち上がって体を伸ばすきっかけになり、健康維持にも重要」と鈴木さん。住民は
体育館のステージ側に向かって立ち、目を閉じる。 同町荒浜の武者なみへさん(66)は「亡くなった親類、友人のことを
思うと涙が止まらない。震災を忘れないためにも毎日祈りたい」と話した。

●阿部〓義さん(74)=亘理町荒浜隈崎
 生まれ育った荒浜に戻りたいが、10メートル以上の堤防を整備してもらわないと無理だろう。不満を口に出しても仕方
 ないので、言わないようにしている。自衛隊が用意した風呂が近くにあるので助かっている。
 (注)〓は胞の下に衣
●山本紀明さん(28)=亘理町荒浜隈潟
 両親が経営する酒販店とかまぼこ工場で働いていたが、電気や水道が復旧しなければ商売を再開できない。別の職を
 探すしかないと割り切って考えている。避難所の人たちと冗談を言い合い、笑うこともある。
●田中啓子さん(60)=亘理町荒浜隈崎
 消灯になる午後9時以降、長男が勤務先から帰ってくる。生活リズムを周囲と合わせるのが大変。食料は充実しているが、
 暖かくなるので管理が心配。梅雨前には仮設住宅に入りたい。
●佐藤隆雄さん(72)=亘理町荒浜隈崎
 避難所にはテレビが1台で、ニュース番組が見られないことが多い。情報が入手できず不安になる。車が流され、自転車
 を借りて5キロ以上離れた自宅に行ってみたが、何も残っていなかった。
●山川たか子さん(77)=亘理町逢隈高屋中原
 きょうは熱が出たので点滴をしてもらった。避難所でかぜをひくのは3回目。きのうは雪が降って寒かった。家は撤去しても
 らうことにした。早く仮設住宅に入って、娘と2人で今後のことを考えたい。
●片岡トシ子さん(76)=亘理町逢隈高屋北原
 息子夫婦と岩沼市内にアパートを借りたが、昼間は1人で心細いので避難所に来ている。夫の位牌(いはい)が流されてし
 まって見つからない。元の場所に戻りたい思いはあるが、津波がまた来ると思うと怖い。
●佐藤れい子さん(60)=亘理町逢隈高屋中原
 避難所は近所の人がたくさんいるので心強い。家は1階が津波でぐちゃぐちゃにされた。物置を仮住まいにしようと、大工さ
んに頼んで工事してもらっている。町の計画が決まらないと電気も通らない。早く何とかしてほしい。

 

吉田小学校避難所

亘理町吉田小(宮城)/友達と一緒、笑顔戻る


河北新報2011年05月12日

<住所>宮城県亘理町吉田宮前63
<避難者数>155人(11日正午現在)
<避難地区>宮城県亘理町吉田、長瀞

 夕方になると、静かだった避難所の体育館に、子どもたちの笑い声が響く。避難所にいる長瀞小(児童217人)の児童が
毎日、約2.5キロ離れた吉田中から徒歩で集団下校してくる。
 校舎が津波の被害を受けた長瀞小は4月下旬から、吉田中の教室で授業をしている。避難所の吉田小では現在、長瀞
小の1〜6年生28人が生活する。3年の平間竣君(8)は「いつも友達と一緒なのでつらくない」と、キッズスペースで遊びに
夢中だ。 下校する児童を引率した前校長で緊急学校支援員の武藤育子さん(60)は「代わりの校舎にも慣れてきたよう。
笑顔が戻りつつある」と話す。 
 一方で、登校は各自に任されているため、朝は保護者が子どもを車で送る姿が目立つ。2年女子の母親(35)は「車を失
った住民もいる。スクールバスを導入してほしい」と漏らす。スクールバスの要望は多く、町教委は「できるだけ早くバスの運
行を開始したい」と説明している。

  ◇   ◇

●阿部美雪さん(32)=亘理町吉田大谷地
 町外の知人に犬2匹を預けている状態なので、ペットを同伴できる仮設住宅に申し込んだ。ただ入居できたとしても2年間
 限定。その後、移り住めるアパートが町内に十分確保されるか心配だ。
●森孝宏さん(38)=亘理町吉田須賀畑
 津波で携帯電話を失って、家族の安否を確認するのに時間がかかった。夜勤のある仕事をしていて、周囲の人たちと生活
 リズムを合わせるのが大変。プライバシーがないのは仕方がないと割り切っている。
●平間洋子さん(82)=亘理町長瀞南原
 食事や衣類などの物資を提供してもらい、助かっている。腰痛に悩んでいるので、避難所に診療所があるのもありがたい。
 朝と午後の2回、ラジオ体操をして、健康管理に気を付けている。
●渡辺真宏さん(42)=亘理町吉田流
 県南の情報が不足している。自分たちが入手できないだけでなく、町外の知人に情報が届かない。避難生活が長引き、家族
 6人の荷物が増えている。仮設住宅に入ったとき、置き場の確保に悩むだろう。
●佐藤京子さん(54)=亘理町吉田流
 高校1年と中学3年の娘と避難している。年ごろの女の子にとって、プライバシーのない生活はつらい。せめて段ボールの間
 仕切りが欲しい。大災害はテレビの中のことだと思っていた。人ごとと思っていてはいけないと考えさせられた。
●橋元美知子さん(58)=亘理町吉田流
 長い避難所生活のストレスで、体も心ももう限界。早く仮設住宅に入りたいが、配給がなくなって暮らしていけるのか不安。津
 波で父を亡くし、家は流された。震災直後のことはもう思い出したくない。
●鈴木郁子さん(63)=亘理町吉田北下
 小学生の孫2人は、学校が始まって喜んでいる。雨にぬれると、放射能の影響が孫たちに及ばないかと心配になる。カップラ
 ーメンなどの食事が続いたため、夫の糖尿病が悪化してしまい、病院に通っている。
 
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